「海外赴任って、なんだかんだ言ってエリートコースでしょ?」「給料も良いし、華やかなイメージだけど…」
そんな風に思われがちな海外赴任。しかし、実際に経験してみると、仕事面では想像以上に泥臭く、日本では考えられないような困難や理不尽さに直面することも少なくありません。
家は古くてトラブル続き、日本本社と現地スタッフの板挟み、裁量労働制という名の長時間労働…キラキラしたイメージとは裏腹に、日々奮闘している駐在員は多いはずです。
こんにちは!フランスでの駐在経験がある、ふーさんです。今回は、私が実際に経験したり、同僚から聞いたりした、海外赴任中の仕事における「マジで困った!」と感じたことを、リアルなあるあるランキング形式(+α)でご紹介します。
これから海外赴任を控えている方、現在まさに奮闘中の方には「あるある!」と共感していただけるかもしれませんし、異文化理解のヒントや、心の準備にも繋がるはずです。それでは、行ってみましょう!
※ランキングは筆者の独断と偏見に基づきます!共感できるもの、できないもの、色々あるかと思いますが、一つの体験談としてお楽しみください。
【困ったこと第9位】話が長い!会議が全然終わらない問題
これはフランス特有かもしれませんが…とにかく話が長い! 会議や打ち合わせが、予定時間を大幅にオーバーすることもしばしば。
理由の一つとして考えられるのは、「伝える側に責任がある」という文化。日本では「言わなくても分かるでしょ(忖度)」が通用しますが、フランスでは誤解がないように、背景から詳細まで、懇切丁寧に説明する必要があるのです。そのため、どうしても説明が長くなりがち。
さらに、議論好きの国民性も相まって、本題から脱線したり、細かい点にこだわり始めたりすると、なかなか結論にたどり着きません。効率重視の日本人からすると、最初はかなりのストレスを感じるかもしれません。
乗り越えヒント: 重要な会議では、事前にアジェンダを明確にし、時間配分を意識してもらうよう働きかける。ただし、一方的に遮るのではなく、相手の文化を尊重しつつ、うまく着地点を見つけるコミュニケーションスキルが求められます。
【困ったこと第8位】ルール無視?「合理的」の解釈の違い
「ルールは破るためにある」とまでは言いませんが、日本ほどルールを杓子定規に守る意識は高くないように感じます。
- 「捨てちゃダメって言われたけど、こっそり捨てといたよ(悪気なし)」
- 「確認するルールだけど、大丈夫そうだから確認しなかった(自己判断)」
- 「これはまだ使えるから持って帰った(もったいない精神?)」
彼らなりに「その方が合理的だ」「結果的に問題ない」と考えての行動なのですが、日本人駐在員からすると「なんで勝手なことを!」と頭を抱える場面が多々ありました。結果、駐在員がダブルチェックに追われる羽目に…
乗り越えヒント: なぜそのルールが必要なのか、背景や目的を丁寧に説明し、理解を求める。性善説に立ちすぎず、重要なプロセスは必ず確認する仕組みを作る。
【困ったこと第7位】孤独との戦い…日本語を話す機会がない
職場に他に日本人がいない場合、業務時間中に母国語である日本語を話す機会が全くない、という状況になります。これは想像以上に孤独を感じるものです。
もちろん現地語能力は向上しますが、複雑なニュアンスを伝えたい時や、ちょっとした雑談で息抜きしたい時に、気軽に話せる相手がいないのは精神的に辛いものがあります。これは、帯同している配偶者(駐妻・駐夫)も同様で、むしろ会社というコミュニティがない分、より孤独を感じやすいかもしれません。
乗り越えヒント: 意識的に日本人コミュニティと繋がる、オンラインで日本の友人と話す時間を作る、家族との対話を大切にする。現地で共通の趣味を持つ友人を作ることも有効です。
【困ったこと第6位】ドライ?個人主義?週末の交流が難しい
日本では「仕事帰りに一杯」「休日に同僚とゴルフ」といった交流も珍しくありませんが、フランスでは(特に地方では)、仕事とプライベートは完全に別、という意識が非常に強いです。
仕事が終われば、家族との時間や個人の趣味を最優先。同僚が残業していても「私の仕事は終わったから」と定時で帰るのが普通。週末に仕事関係で集まることも稀です。車通勤が多い地域では、そもそも「ちょっと飲みに行こう」が難しいという事情もあります。
日本人駐在員同士では交流が深まりやすい一方、現地スタッフとの距離がなかなか縮まらない、と感じるかもしれません。ウェットな関係を期待していると、少し寂しく感じることも。
乗り越えヒント: 文化の違いと割り切り、無理に日本的な付き合いを求めない。仕事上の信頼関係をしっかり築くことを優先する。プライベートは家族や自分の時間を大切にする、というフランス流の良い面も取り入れてみる。
【困ったこと第5位】理不尽!「全部お前のせい」責任転嫁問題
何か問題が起きた時、「駐在員がちゃんと情報をくれなかったからだ」「日本の指示がおかしい」と、駐在員がスケープゴート(いけにえの羊)にされるような場面に遭遇することがあります。
これは、彼らが「自分たちは現地の会社の人間であり、駐在員はいずれいなくなる存在」と考えていることの表れかもしれません。ある意味、彼らの会社への帰属意識や団結力を高めている側面もあるのかもしれませんが…。
良かれと思ってやったことに対しても、「聞いてない」「なんで勝手にやったんだ」と非難されると、さすがに心が折れそうになります。
乗り越えヒント: ある程度の「諦め」も肝心。全てを真正面から受け止めすぎない。重要な決定や変更は、必ず事前に現地側と合意形成を図り、記録に残す。理不尽だと感じても感情的にならず、冷静に事実ベースで対応する。
【困ったこと第4位】「私の仕事じゃない」協力してくれない壁
フランスでは、職務分掌(それぞれの仕事の範囲)が明確に決まっていることが多いです。そのため、隣の同僚がどんなに忙しそうにしていても、「それは私の仕事ではない」と手伝わないのが一般的。
駐在員の仕事は多岐にわたり、時には範囲外の業務もこなさなければならない場面がありますが、現地スタッフに協力を求めても「それは私の契約外だ」と断られることが日常茶飯事です。日本人感覚の「困ったときはお互い様」は通用しにくいのです。(もちろん、親切に助けてくれる人もいますが少数派です)
乗り越えヒント: 協力が必要な場合は、相手の職務範囲を理解した上で、なぜ協力が必要なのか、相手にとってのメリット(間接的でも)は何か、などを丁寧に説明し、お願いする。日頃から良好な人間関係を築いておくことも重要。
【困ったこと第3位】終わりなき激務…裁量労働制の罠
海外赴任者は、役職に関わらず管理職扱いとなり、裁量労働制が適用されるケースがほとんどです。これは、労働時間の上限がなくなり、残業代も基本的には出ない(またはみなし)ことを意味します。
日本本社との時差対応、現地でのトラブル対応、多岐にわたる業務範囲…結果として、深夜までの残業や休日出勤が常態化しがちです。「てっぺん越え(午前0時過ぎ)まで仕事」も珍しくありません。ワークライフバランスを保つのは非常に困難になる可能性があります。
乗り越えヒント: 完璧主義を捨てる。全ての仕事を自分で抱え込まず、現地スタッフに任せられる仕事は積極的に権限委譲する(任せ方も工夫が必要)。効率化を図る。時には「できない」と断る勇気も必要。会社に労働環境の改善を訴えることも検討。
【困ったこと第2位】なぜ今それを言う?空気を読まない(読めない?)発言
日本の「空気を読む」文化とは対照的に、フランス人は思ったことをその場でハッキリ言う傾向があります。
それは良い面でもあるのですが、会議の場で、議論の流れや緊急度を考慮せず、突然全く関係のないアイデアを話し始めたり、非常に細かい、どうでもいいような質問を延々としたり…。聞いているこちらが「会社のレベルが低いと思われるからやめてくれ…」と恥ずかしくなることも。
「とりあえず思いついたから言ってみた」という感じで、深掘りすると「やっぱりやめとく」となることも多く、貴重な時間が浪費されることにストレスを感じます。
乗り越えヒント: 発言自体は遮らず、まずは受け止める。その上で、「その件は別途議論しましょう」「今は〇〇を優先しましょう」など、うまく軌道修正するファシリテーション能力を磨く。会議の目的と時間配分を明確にしておく。
【困ったこと第1位】究極の壁?「言ってることは分かるが、意味が分からない」
そして、私が(そして多くの駐在員が)最も困惑するのがこれです。相手の言葉(単語や文法)は理解できる。でも、その発言の意図や背景、つまり「言っている意味」が全く理解できない、という状況。
例えば、
- 「(自分たちが提案した企画なのに)納期に間に合わないのは日本のせい。残業代請求するね」(←本気)
- 「昨日在庫確認した時はあったんだけど、今日数えたら間違ってた。だから工場動かせないや」(←悪びれる様子なし)
「え?冗談でしょ?」と思いたくなるようなことが、真顔で語られるのです。これは単なる言葉の問題ではなく、仕事に対する価値観、責任の所在、問題解決へのアプローチなどが、根本的に日本と異なることから生じる現象だと考えられます。
乗り越えヒント: すぐに反論したり、日本の常識を当てはめたりせず、まずは「なぜ相手はそう考えるのか?」を理解しようと努める。疑問点は具体的に質問し、認識のズレを埋めていく。異文化理解に関する書籍を読んだり、経験豊富な先輩に相談したりするのも有効。
【番外編】困るけど嬉しい?フランス流「挨拶」文化
最後に、困るというよりは「戸惑うけど、慣れると嬉しい」こと。それは挨拶へのこだわりです。
日本では、社内ですれ違っても挨拶しない人もいますが、フランスでは知らない人同士でも「Bonjour(こんにちは)」と挨拶を交わすのが普通。特に、親しい間柄(同僚など)では、男女問わず「ビズ(La bise)」と呼ばれる、頬を合わせてチュッと音を出す挨拶をします。
コロナ禍で一時下火になりましたが、最近また復活しているようです。慣れないうちはドキドキしますが、これは親愛の情を示す大切なコミュニケーション。これをするかしないかで、相手との距離感が変わることも。
ポイント: 郷に入っては郷に従え。恥ずかしがらず、笑顔でしっかり挨拶(ボンジュール!とビズ)をすることが、良好な人間関係を築く第一歩になります。
まとめ:困りごとは成長の糧!異文化理解と適応力を武器に
海外赴任中の仕事は、決して楽なことばかりではありません。言葉の壁、文化の違い、働き方の違いから、様々な「困ったこと」に直面します。
しかし、これらの困難や理不尽さを経験し、試行錯誤しながら乗り越えていくプロセスこそが、あなたを大きく成長させてくれるはずです。
- 異文化への理解が深まる。
- コミュニケーション能力が向上する。
- 問題解決能力や交渉力が鍛えられる。
- 精神的にタフになる。
困ったことが起きたら、「なぜ?」と相手の文化や考え方を理解しようと努め、柔軟に対応していく。その経験が、あなたの視野を広げ、今後のキャリアにおいても必ず活きてくるでしょう。
これから赴任される方も、現在奮闘中の方も、ぜひこれらの「あるある」を参考に、異文化の中での仕事を楽しんでください!
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